愚かなる独白

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ろくでなしの雑記

物語にテーマは必要か

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 物語には「主題」が必要かどうか、つまり「テーマ」が必要かどうかという問題は、小説や漫画を描いている人なら誰しも考えたことがあるだろう。良い物語には高尚なテーマがあり、一般的に良しとされることや、新しい論理体系を含んでいたりするものだという思い込みがある。だが僕は、必ずしも物語にテーマを入れる必要はないと思う。というより、意識せずとも、物語を構築していく内に自然とテーマというのは浮かび上がってくるものだと思っている。

 

 

 そもそもテーマというのは何も、一般的に良しとされることだけではない。例えば「人殺しは楽しいよね」というテーマがあってもはっきり言って問題ないはずだ。もちろんそんな話を作ると批判はされるし、読む人も限られるだろう。だが、エンタテイメントの世界では、低俗だから面白いということも往々にしてある。

 

 そして読む人によって解釈を変えられるように、あえて余韻を残す作品も多くある。これは物語とは違うが、L'Arc〜en〜Cielのhydeは作詞をする時、はっきり断定して書かないらしい。はっきり書いて「こうだ」と断定してしまうと、共感できる人が少なくなってしまうからだ。例えば「おじいちゃんから時計をもらったけど壊れてしまった」という詩にするより「宝物をなくしてしまった」と書くほうが誰しもイメージしやすくなるという考えだ。

 

 これは物語でも当てはまるだろう。いろんな人のいろんな人生に当てはめられるようなテーマ設定の作品は、確かに多くの人に愛される。

 

 映画『桐島、部活やめるってよ』は、学校での話、つまり学園物かと思いきや、あれは実は世界についての話なのである。世界の縮図である学校という場所に限定して描くことで、誰にでもわかりやすく置き換えている。

 

 他にも『ショーシャンクの空に』は刑務所の話だから自分は関係無いと思う人も多いだろう。特にアメリカの刑務所なんだから日本人の僕たちにとっては全く関係がないように見える。だがあれも実は人生についての話で、つらい現実があっても、目標に向かって頑張って穴を掘り続ければいつかはたどり着けるよ、という応援歌なのだ。

 

 それに、テーマは一つである必要もない。いろんなテーマが混在していると、作品内の軸がはっきりせず評価が落ちる可能性もあるが、二つや三つテーマがある面白い作品も沢山ある。

 

  

 もう一つ大事なことがある。駄作の特徴として、説明的になっている、というものがある。邦画や漫画にもよく見られがちの病理だが、人物に説明させることも駄目だ。初めからテーマを意識して作っている、つまり「俺はこういう部分を告発したいんだ」という思いが先走りすぎて、説教臭くなってしまう。そういう部分が客の鼻について批判される。理想は、テーマが物語の中に上手く溶け込んでいて、それが観ている内、あるいは読んでいる内に、自然と頭にインプットされるようなものだ。キャラクターに演説させて伝えるだけなら、自分で演説するなり、ブログに書くなりすればいいだろう。 

 

 そもそも世の中の人が物語を見るとき、テーマを見たいわけではないし、何かメッセージを受け取りたいわけでもない。よく漫画や小説の新人賞の選考委員のコメントで「テーマがないからこの作品は駄目だ」とか「この作品からは何が描きたかったのかが伝わらない」と言うが、そんなものは後からついてくるものであって、本来人々は、ストーリーを純粋にエンタテイメントとして楽しみたいだけなのだ。逆に言えばそれさえクリアできていれば十分であり、テーマやメッセージが全面展開されると楽しめない可能性も出てくる。ましてや作中で説教なんかされる為に見たいわけではあるまい。

 

 そして創作者というのは、自分が面白いと思うものを作りたいし、作りたいものを作りたいのだ。それに対して「テーマは何ですか?」と聞かれても、答えようがなかったりする。「テーマがどうこうじゃなくて、俺はこういうのを作りたかっただけだ」という、それ自体がメッセージでもあるのだ。映画『8 1/2』を観れば、それはよくわかる。

 

 

 だから、テーマを初めから意識して作るのは悪いわけではないが、説教臭くなってしまうから気をつけなければいけないし、自分が作りたいものを作っていれば自然とテーマのようなものは浮かび上がってくるだろう。仮にその浮かび上がったテーマを自分で説明できなくても、創作者はそれでいいと思う。創作者は自分が作りたいものを作ればいいのだ。

 

 だからと言って自己満足になってはいけない。客の思考を意識して、工夫に工夫を重ねる必要があるだろう。あくまでエンタテイメントなのだから。

 

 

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いや勿論テーマを初めから決めるのも、それで上手くできるなら全然ありだけどね。