愚かなる独白

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ろくでなしの雑記

小説『ぼくは愛を証明しようと思う。』を読んだけど

ぼくは愛を証明しようと思う。

 藤沢数希の『僕は愛を証明しようと思う』という小説を読んだ。

 これは恋愛小説だが、ただの恋愛小説ではない。恋愛工学という、恋愛をする上でのテクニックを、心理学や経済学のリスクマネジメントの技法を取り入れた、新しい学問がテーマになっている。

 この恋愛工学は著者の藤沢数希が創出したものだ。彼はこれを自身のメルマガで配信している。

 

 この小説でも、非モテコミットラポール形成ACSモデルスタティカルアービトラージフレンドシップ戦略友達フォルダなどの色々な用語が出てきて、作中でわかりやすく説明されているから恋愛工学を知らなくても読める。

 

 

 恋愛工学は、リチャードドーキンスの『利己的な遺伝子』を前提に考えられている。

利己的な遺伝子 <増補新装版>

利己的な遺伝子 <増補新装版>

 

  女性は、Good Genes(個体として高い生存能力・繁殖力を持つ男)か、Good Dad(子育てに役立つ男)の2タイプを求める。本能的にそうなっているらしい。でも本当の意味でGood GenesやGood Dadな遺伝子を持っている男は見ただけではわからない。だからそれらの遺伝子を持ってそうな振る舞いをする男に女は食いつく。つまりモテる奴がモテる。モテナイ奴は、モテているように立ち振る舞えばいいらしい。

 そのようなことを元に、色々なテクニックが考えられ、それを実行することで、セックスできる確率が上がるということだ。

 

 確かにこういう話を聞くと、純粋に「へーおもしろいね」と思うが、本当にそうなのか?とも思う。

 利己的な遺伝子については特に言うことはないが、恋愛工学で教えられている方法で本当に上手くいくのかわからない。というより、僕には判断ができない。何故なら僕は圧倒的に恋愛経験が少なく、ナンパなどしたこともないからだ。

 

 そんな僕でも非モテコミットについては非常に共感できた。確かにこれは恋愛に限らずなんでもそうだが、人間ダメな時はとことん駄目である。「余裕のない奴が必死こいてもどうせ無理だから諦めて早く切り替えろ」ということだろうが、その考え方にはわりと賛成だ。

 実際僕も経験がある。ある女性に興味のなかった時は、相手の方からアプローチをしてきて、「かっこいいかっこいい」とうるさかった。だが僕がその子を好きになって非モテコミット状態に陥ると相手にされないどころか、うざがられた経験もある。だから多分非モテコミットというのはある程度は正しいのだろう。

 

 あと、読んでいて思ったことは、恋愛工学を使ってゲットできた女は皆ただのヤリマンなのでは?という疑問だ。数打ちゃ当たる理論で、とにかく声をかけまくって、その中でヤリマンがいたからセックスできたというだけの可能性もあるような気がする。

 

 

 恋愛工学は非常に批判も多い。多分女性なら大多数が不快に思うのだろう。

 男が「俺は女のことわかってるぜ」という顔をしながら「こうやれば女は喜ぶのさ」とか言われたら確かにうるせぇ死ね、となるのも理解できる。

 ただもう一度いうが、僕は恋愛経験が少なくその手のことについてはほとんどわからないのでここでは言及しないでおく。

 

 その代わり僕は一応物語については多少勉強しているので、今日はただ純粋に小説として語りたいと思う。

 

 

 恋愛工学が正しいか正しくないか判断できる立場ではないので、仮に正しいものと仮定した場合でも、そこまで優れた作品だとは思わない。

 

 この物語は、主人公の渡辺正樹が、彼女に浮気された挙句、ふられて落ち込んでいるところ、永沢という男と仕事で知り合う。永沢は恋愛工学を使って女を抱きまくっていた。渡辺はその永沢に弟子入りし、恋愛工学について教えてもらい、モテる男に成り上がっていく。という話だ。

 

 文章は簡単なもので構成されており(ただ「すみません」が「すいません」になっていたのは気になった「すいません」は口語文だから文章にするには「すみません」にしないといけないのでは?)、所々ユーモアも効いていて非常に読みやすいが、この手の話で重要であろう心理描写がしょぼい。

 

 恋愛工学という、藤沢数希のメルマガ読者以外誰も知らないものを説明しないといけないので、前半から中盤にかけてほとんどセリフによる説明だ。それは仕方ないのでいいとしても、モテナイ男の心理描写や浮気されて落ち込んでいるときの気持ちなどが淡々としすぎている。

 

 とくに主人公の渡辺は、ほとんどナンパもしたことがないだろうに、結構簡単にナンパに慣れてしまう。一応緊張してうまく声をかけられないという描写はあるが、申し訳程度に出てくるだけで、その後すぐに切り替えてナンパをしまくる。

 人見知りの僕からすればこんなこと絶対に無理だと思うから、イマイチ乗れなかった。

 

 多分著者の藤沢氏は、恋愛工学の説明や、それを駆使して女を落とす部分が書きたかったのだろう。だから一応不自然にならないように心理描写は入れているが、どうもそれが事務的な感じで「はいはい心理描写、心理描写っ」「一応入れたよ」という感じがした。

 

 藤沢氏のツイッターでの発言やネット上にある記事などを読んでみても、彼はどうも合理主義者でビジネスライク的な部分の強い人だと感じた。彼が自身のメルマガで配信している恋愛工学についても、別にモテない男を救うだとか女を幸せにするだとかそんな理由ではなく、ただ単にビジネスとしてやっているように思う。

 

 作中で、女を抱けるようになって調子に乗った渡辺に対して師匠の永沢が説教をするのだが、それも本心で言っていないような無機質な感じがした。少し穿った見方をすると、小説に「女は肉便器」的な本音を書くと批判されるからその言い訳として書いているようにも見えた。まあこれはあくまで個人の感想だけど。

 ただあの説教によって心を入れ替えた主人公がスランプを抜けるという流れがあるから、それを描くのは良い。それでもやはり淡々としすぎている。説教されて、すぐその本質を理解して、すぐに上手くいく。葛藤がないのだ。

 

 

 そしてこの小説はとにかくテンポよく進む。そのおかげで読みやすくなっているのも事実だが、心理描写も少なく淡々と成功して女を抱いて、次の女と出会って、、、と進行していくから、多くの人はそこまで入り込めなかったのではないだろうか。雑誌の裏に載っている広告の「僕はこれで成功しました!」的な匂いを感じる人もいると思う。僕は物語を楽しむというより「セックスしてぇ!」と思って読んでいた。

 そこをもっと心理描写をじっくりと描くと、恋愛をする時の男女の攻防のようなものがより浮かび上がって面白かったのに。と思う。

 一応攻防のようなものはあるが、恋愛工学が発動されればもうほんの数行でクリアできてしまうので、より胡散臭さが増してしまうだけだ。ただでさえ恋愛工学が胡散臭いものと思われているのに、それでは乗れない人がいるのも仕方がない。人間は具体的なことにリアリティを感じる生物だ。説得力を出すには具体的に描くのが一番いいのだ。

 

 ただ終盤で出てくる、モデルの女を落とすところは格ゲーみたいで楽しかった。

 でもやはり恋愛工学の戦略的なことについて言及しているだけで、緊張感のようなものは伝わってこなかったが。

 

 この小説の良い部分はテンポが良く、読みやすいところ。そして逆に悪い部分は、心理描写が少なく緊張感がないのと、主人公が失敗しないところだ。

 自分が落としたいと思った女の前で緊張してしまって失敗してしまうとか、そこからどうやって巻き返すかとか、ゲーム性をもっと誇張して書いてもよかったのではないか。あくまでフィクションなのだから、もっとエンタテイメント性を強調したほうが良かったと思う。

 

 

 

 あとこれは僕にとってはどうでもいいが、Amazonのレビューには恋愛工学自体が『the game』のパクリだとか書いてあったなぁ。

 

 まあパクリでも何でもいいが、僕の知らない世界ではこういったことが行われているのかと思うと怖くなった(笑)

 大人の恋愛って嫌だねぇ……。生き残れる自信ないわ。

 

ぼくは愛を証明しようと思う。

ぼくは愛を証明しようと思う。

 

 

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そしてなにより、恋愛は楽しくないと再確認したわ(笑)