愚かなる独白

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ろくでなしの雑記

ハンターハンターのメルエムはAIのメタファー? そしてコムギとの関係性は?

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 人工知能の脅威について綴った本を読んでいるときにふと思ったのだが、ハンターハンターの蟻編に登場するメルエムが、知能爆発(人間以上の知能になること)を起こした人工知能のメタファーに捉えることもできるのではないかということだ。

 

 巷では人工知能は安全だという人もいる。人工知能は結局はプログラムだから、人間に対してフレンドリーになるようプログラムされていれば問題は起きないし、逆に人間に大いに役立つと。

 しかし、もう一方では人工知能は非常に危険だという意見もある。人工知能は人間とは違い、ただ目的を達成することを目的に作られている機械なので、例えば、人間にフレンドリーでいるようプログラムされていたとしても、目的を達成するためにそれが邪魔になるなら、人間に対してフレンドリーでいるとは限らない。

 それに人工超知能を開発した後危険だということが発覚し、どこかに閉じ込めていたとしても、どうにかしてそこから抜け出そうとするだろう。ただ自分の目的を達成することを考えてだ。それが、人間が人間のために命令したことだったとしても、人間にとって悪く働く可能性がある。

 

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 人工知能は、憎しみはないが愛もない。人間とはまったく違う。生物ですらない、ただの人工的な知能だ。

 これはキメラアントにも通づる。特に圧倒的に強く賢いメルエム。彼は一国を乗っ取り、人間を家畜化しようとした。だが彼は人間に対して憎しみを抱いているわけではない。ただ己の本能に基づいて行動しているだけだ。

 

 それはまるで我々人類とネズミの関係性のようだ。

 人間はネズミを憎んではいない。だが実験台に使い、利用する。そこに罪悪感もなければ喜びすらない。知能に差がありすぎて、そうなってしまうだけだ。

 

 逆に、もしあなたが、言葉の話せるネズミに捕まったとする。そこでそのネズミが「我々がお前ら人間を作ったのだ」なんて言ったらどう思うか。

 仮に信じたとしても、驚いて終わりだ。すぐに逃げ出すことを考える。なんとかネズミを説得しようとするだろう。例えばその時に、逃がしてくれればそれと引き換えに、ネズミにとって便利な道具を作ってあげようと取引するかもしれない。そして約束を交わし、そこから脱出できたとして、果たしてあなたはその約束を守ろうとするだろうか。

 

 人間とネズミの関係。人間とキメラアントの関係。そしてそれは人間と人工知能の関係でもある。

 

 

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 未だにメルエムを凶悪だと考える人もいる。だがメルエムは悪ではない。ただ生きているだけなのだ。

 

 

 ハンターハンターの場合は念能力というものがあるから人間とネズミのようにはならなかった。

 

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 コムギがいたおかげで、メルエムは軍儀に没頭した。軍儀には複合的な意味があるが、一つは恋愛のメタファーでもあると思う。つまりメルエムはコムギに恋をしたと解釈できる。でもそうなったのはコムギが軍儀が強かったからだ。もし軍儀で負けていたら他の棋士達と同じように殺されていただろう。だが実際コムギはメルエムに勝ち、そこから何度も対局を重ねた。そしていつしかメルエムは恋をした。恋は盲目という言葉があるように、他のことはどうでもよくなって、メルエムは人間から見ておとなしくなった。おそらくコムギの軍儀は念能力だ。つまり念能力があるから人間とネズミのようにはならなかったということだ。

 まあ実際にはメルエムは毒で死んだが、王として死んだのはコムギに恋をしてからだ。

 だがもしこれが現実の人間と人工知能だったら、人間には念能力がないので、人類は絶滅するか家畜になっているかもしれない。

 

 つまり念能力があるか無いかという違いがあるだけで、「メルエムと人間」「人工知能と人間」の関係性に非常に近い。

 

 

 

 ちなみに、コムギとメルエムの関係を恋だと解釈するのにはちゃんと根拠がある。

 最後の対局中にメルエムが毒に侵されてもう先が長くないと告白する。するとコムギは「不束者ですがお供させてください」と言う。「お供させてください」これはどう考えても結婚の時のセリフだろう。つまり二人の結婚を意味すると思う。

 

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 そして、軍儀には恋愛のメタファーがあると書いたが、それはこういうことだ。

「孤狐狸固」というコムギの作り出した手があり、コムギはそれを我が子だと言っていた。だがその戦術は使えないということでコムギは封印した。そしてメルエムと対局することによって、また新たな「孤狐狸固」として蘇った。これは要するに二人の子供が生まれたことの隠喩だろう。

 

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 しかもメルエムは自分の毒のせいで近づくとコムギも死んでしまうのに、自分が会いたいという理由でコムギに会いに行った。これはまさしく「恋」だと思う。もし友情や家族愛のようなものだったら、会いには行かず、コムギを安全な場所に逃がすはずだ。恋はいつだって独善的なものだから。

 

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 そして最後にはメルエムが死に、コムギも「私もすぐ行きますから」と言ってエピソードは終わる。

 

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つまり、軍儀を通して二人の人生を描き切ったように思えるのだ。

 

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少年漫画でこんなエピソードを描いた冨樫義博はやはり只者ではないと思う。

 

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うむ。実にいい話。