愚かなる独白

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ろくでなしの雑記

映画『新宿スワン』レビュー

映画

新宿スワン [DVD]

 

ずいぶん前に深夜ドラマでもやっていたけど、それを観たときは超ダサくて全く面白くなくて、やっぱ実写化は無理だなと思ったのだが、一応映画も観てみることにした。

感想は、まあまあといった感じだろうか。全くというほどではないが、そこまで面白くなかった。
ヒデヨシ編を一本の軸にして、ハーレム吸収編、アゲハ編、と三つのエピソードを二時間に詰め込んでいるからか、色々薄まっている印象だった。

僕が原作を読んだ時、裏社会の怖さとヤバさ、そして残酷さなどが感じられ、それが作者特有の安定しない絵柄でより一層際立っていた。だがこの映画にはその雰囲気は感じられなかった。この映画が絶対にそうだとは言わないが、よくある、人気俳優たちを集めて撮った浅い映画のような雰囲気が終始漂っていた。

これは原作でもそうだからしょうがないじゃないかと言われそうだが、主人公のタツヒコがとにかくクサイ。「女を幸せにする」だとか「男が女を守るのは当たり前でしょ?」のセリフも、一々言わせなくてよかったかもしれない。セリフにして言わせると正直気持ち悪い(笑)ただ行動で示させた方が格好良かったなぁ……。

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あとヒデヨシとの喧嘩が終わったタツヒコが、ヒデヨシを許し「今日から友達だバカヤロー」と言うのもさすがにどうかと思う。
ヒデヨシのせいでシャブ漬けになって人生が狂った女もいっぱいいるのに、それを許しちゃうのは問題がある。僕個人としては別に構わないが、主人公はいわばヒーロー的な存在なのに、敵に同情して許してしまったらタツヒコというキャラの正義がどこにあるのかわからなくなる。
まぁそんな優しすぎるところがタツヒコの弱点であるから、ある意味キャラクターはぶれていないからいいのかもしれないが、笑顔を作って「また喧嘩しような」などと言ったら、それを観て不快感を示す客もいるのでは? ということを考えると、あまり上手い演出だとは言えない。

 

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それに綾野剛は正直合っていないと感じた。
タツヒコは、人相は悪いが熱血で優しい男。だが田舎者で喧嘩は滅法強い。という少年漫画の主人公みたいなキャラだが、綾野剛にはそのキャラクター性は見出せない。
タツヒコは見た感じからして喧嘩が強そうだが、綾野剛は全体的に細いし、顔は確かにタツヒコと同じ細い目をしてるが、また種類が違う。タツヒコの目つきの悪くて不細工な顔は、そこからワイルドさが滲み出ている。しかし綾野剛は可愛い印象だし、喧嘩の弱いいじめられっ子が高校デビューしてグレたような雰囲気だ。
あの見た目で喧嘩が強いと言われても説得力に欠ける。

それでも説得力を持たせるには、実際の喧嘩シーンで客を納得させるしかない。だがこの映画の喧嘩シーンは見やすさはあるが、何故勝ったのか、何故負けたのかという論理がない。

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この手の作品にありがちだが、ただ大ぶりのパンチや適当な蹴り、引っ張り回して頭突きをして「うおぉぉぉ」と叫んで暴れる。まぁ素人だからそんなもんだが、それだったら基本的に体のデカイほうが勝つはず。でも何故かフィクションでは、弱そうなイケメン主人公が勝つ。そんなの観ていて面白いはずがない。

山田孝之は身長は低いが顔の骨格もしっかりしているから殴られてもある程度は大丈夫だろう。でも綾野剛は細いし顔も小さいから、あんな大ぶりのパンチを一発食らったら即失神KOだ。

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それにパンチなんかも実際はそんなに当たらない。ディフェンスができていない素人でも、素人の大ぶりのパンチは割と避けれる。
まぁそれはいいとしても、この手のアクションでは論理が必要。
「力が強いから勝てた」とか「冷静で距離の取り方が上手いから一方的になった」とか「動体視力がよくてディフェンスが上手いから勝てた」とか「相手の急所を執拗に狙い、噛みつきや目潰しなども厭わないから強い」とか、その他にも「頭が良くて手際がいいから常に自分の有利なポジションに持っていける」などのように、そのアクションの流れで観客に理解させて見せたほうが断然面白い。

格闘技の試合でも、全く知識のない人が見るとそこまでおもしろくない。明らかに相手より体が小さいのに楽に敵を倒して上に乗って一方的に殴っているのを見ると、素人なら「力が強いのかな?」と思うだけだ。だが実際は技術の問題で、その技術の差で勝っている。

他にも一方が一方を殴ってばかりで、もう一方のパンチは全然当たらないのはなんでだろう? と思う試合なんかがボクシングではよく見られる。これも実は距離の取り方が上手いとか、フェイントが上手いからパンチが当たるとか、いろいろな技術の差がそこに出ている。だがそれを知らないと、ただなんとなく見ているしかない。

自分の好きな選手だったらそれでも楽しく観れるだろうが、知らない人同士の戦いだと、勝ったか負けたかの結果にしか注目しなくなる。映画でも同じで、そうなるとダラダラと喧嘩のシーンを見せられてもつまらなくて、早く終われよ、と思う。
結果ではなく、過程そのものも楽しませようと思えば、「何故強いのか」という部分をわからるように描くと、技術のやりとりそのものが面白くなる。

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この映画にはそういったことに気を使われていなかったので、喧嘩シーンに緊迫感がなく、とことんつまらなかった。別にアクション自体を見せようとしているわけではないようなヤンキー物の映画とかなら話は別だが、この映画内ではアクションそのものが重要だったりする。だからダメだと思った。

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女性陣に関してだが、風俗嬢の女なのにやさぐれた感じもなく、沢尻エリカの薬中っぷりも、上品で綺麗すぎる。
せっかく実写でやっているのだからもっと生々しく描いても良かったのでは?と思う。園子温監督なら余裕でできたはず。

この新宿スワンという作品は、簡単に言えば”お仕事漫画”だ。スカウトマンという仕事と、その周辺の世界について描いた作品である。作者の和久井健は元スカウトマンであり、その体験を元に作られたもので、読者はそれを「こんな世界もあるんだなぁ」的な視点で楽しんでいる。

だがこの映画ではスカウトマンの仕事っぷりが、尺の関係もあってちゃんと描かれてはいない。
主人公がスカウトマンになって、いつの間にか仕事を覚えて上手くやって、スカウトした女が死んだり厄介ごとに巻き込まれたりするも、それをあっさりクリアして、中学時代の因縁の相手と喧嘩して終わり。
スカウトマンがどうとか、歌舞伎町という町がどうとか、風俗やAVという仕事がどうとか、ヤクザや他の会社や、同僚とのアレコレなどは全部が薄っぺらく、表面上だけのものだった。

裏社会の話を描いた話としては、不穏な空気感や残酷さなどが足りない。そういうのを求めている人には物足りないだろう。

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ただ山田孝之は相変わらず良かったし、沢尻エリカは勃起級に可愛かった。
この二人が良かったから一応最後まで観れた。

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もっとリアリティを徹底的に求めたやばい作品が見たかった。
その辺は井筒監督に期待するしかないのかな。