愚かなる独白

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愚かなる独白

ろくでなしの雑記

うんこを漏らさない男はいないという事と、実際に漏らした話

日記・雑談

僕はとにかく腸が弱い。ちびまる子ちゃんの例の奴くらい弱い。あの随分無茶な輪郭の奴。鼻の皮膚だけ剥いだみたいな奴。

現にこのブログを書いている今現在もちょっと腹が痛い(ちなみに何故か口も臭い)。

これはおそらく父からの遺伝だ。父がトイレに行ったとき、そこから聞こえてくる獣の咆哮のような厳つい音を考えると、彼もゲリラーなのは明白だ。そして姉は多分便秘だ。便を出しやすくするための乳製品などを冷蔵庫でよく見たし、水面に肉団子を落としたような音をよく聞いていた。はじめは魚に餌でもやってんのか?と思ったがどうやらあれは便らしい。

聞くところによると、男性は下痢で女性は便秘になりやすいという。
それにはちゃんと理由があって、ストレス耐性の問題もあれば肉体的な問題もある。例えば男性は女性に比べて筋力があるので、腹筋が弱いことによる排便困難を起こしにくく、他にも子宮による圧迫が起こらないということや、冷え性になりにくい体質のせいだと言われている。

そして、ある食品メーカーの統計によると、男性の3割が下痢に悩まされ、女性の5割が便秘に悩まされているらしい。
ということは僕も父もその3割に含まれているということだ。医療費の自己負担と同じ割合。
だがその統計って本当に正しいのか?とも思う。
世の中の男はみんなウンコを漏らしてるのでは?という危惧がどうにも拭い去れないでいるのだ。

お笑い芸人の話でもよく漏らした話を聞くし、だいたい男同士で集まって話していると、その手の話題で共感を得られることが多い。というより共感されなかったことはない。

現に僕も小学生の時に思いっきり漏らしたことがある。



僕は子供の頃からバスケをやっており、週に何度かは学校の体育館で練習がある。その日もいつものように練習をしていた。春先の少し肌寒い日の午後だった。
レイアップシュートの練習をしているときに、急にじんわりとした痛みがこみ上げてきた。慣れっこだった僕はもうその時点で、これから来るであろう壮絶な戦いに備え、「来たか…」というようにゴクリと唾を飲み込んだ。

少し我慢すると痛みがスーッと引いていき、また少しするとゆっくりとさっきよりも強い痛みがくる。これを何度か繰り返しているとき、僕は少し背が低く見えていただろう。何故なら前屈みだったからだ。まるでボクサー。パンツはトランクスだが体勢はボクサーだった。

それを見かねた心優しいバスケの下手くそな友達は「大丈夫?」と声をかけてきた。僕の華麗なパスを全く受けられずポロポロと取りこぼすようなクソみたいなレベルのプレイヤーだが随分と気が利く。
さらには「お腹を両手で押さえると痛みが和らぐよ」という東スポ並みの嘘っぽい情報を教えてくれて、僕は体育館の端でそれを実践した。

確かに痛みが少し引いたような気がした。両手で横っ腹から中心に向けて押し込んでいくようにすると、その間痛みがわからなくなり、それを止めると腹の奥の方にガスが溜まってるような、ゲップが出そうな感じがした。

今の僕ならもう大人なので、汗をしっかり拭いてから休憩しないと体が冷えてますます腹痛が悪化する、ということくらい想像に容易いが、まだ子供だ。そんなことも考えられず、ただぼーっとチームメイトの練習を見ていた。

そうこうしている内に練習は終わった。
その頃にはさっきまでより大分痛みもマシになり、自転車で1キロ程の道のりを帰ることくらいはできるようになっていた。
みんなで帰り支度をし、先生のよくわからない自己満足のウザイほどつまらない話を聞き、痛みが和らぐ超絶テクニックを教えてくれた友達に別れを告げ、自転車に跨って帰った。

その時はたまたま同じマンションに住んでいる後輩がいて、彼と一緒に自宅に向かっていた。
だがまさかの展開が僕を襲う。
もうあと数百メートルの所で突如として腹部に強烈な痛みが走ったのだ。
尋常ではない痛み。ギュルギュルギュルという、なんかよくわからない怖すぎる音も鳴っている。

今ならこれでも気合いでなんとか家までたどり着けたかもしれない。だがあの頃はまだ青かった。顔も青いし心も青い。青春とはこういうことなのかもしれない。時期もちょうど春だし。

後輩の心配そうな、鬱陶しそうな、内心馬鹿にしたような、何とも言えない顔を横目に、ゆっくりと自転車を漕ぎ進める。マンションが見えてきた。いつもならこの距離なんて1分程度で着く。だが今はもの凄く遠く感じる。漕いでも漕いでも辿り着けない。砂漠で、蜃気楼を水と勘違いした遭難者の気分だった。

もう、だめかもしれない……。

その場に止まった僕は、決心して後輩に言った。

「先に帰ってて。ちょっとここで休んでから帰るから」

朦朧とする意識の中、僕は必死に顔を作ってはみたが、おそらく化け物のような醜い顔をしていただろう。
太陽も沈み出し、薄暗くなった中で見た後輩の目は、ベテランの殺し屋のように恐ろしく冷たく思えた。

「わかった」と一言呟き、振り返ることなくマンションの方に消えゆく後輩のたくましい背中を見つめ、僕は心の中でほっと一息ついた。そして少しの安堵を覚えた。

よし、準備は完了だ……。

僕は直立不動で全てを天に託した。奴を解放したのだ。みずみずしい音が静かな住宅街に広がる。
それと同時に痛みが一気に引いていき、ある種の快感もあった。だが、全ての膿を出し終え、痛みがなくなった代わりに、あるものが僕の心を支配する。罪悪感と背徳感だ。

この暴虐な茶色い奴をどうしようか。
お母さんに怒られるんじゃないだろうか。
というか俺は一人で何をしていたんだ。
てかさっきのあの後輩の態度はなんだよ。

様々な感情が次々と湧き出し、呆然と立ち尽くす。
だがこんなこともしていられない。ここで一人突っ立っているところを人に見られたら何事かと怪しまれる。
僕は自転車のサドルには座らず、立ち漕ぎでマンションに向かった。

さっきまで心地よかったパンツの生地が、急にひんやりと冷たく、不快な肌触りになる。大好きな彼女がある日急に冷たくなるような、そんな感じ。

ただ我ながら、後輩を先に帰すという作戦は良かったと思う。
人前で漏らすことの恐怖心はでかい。誰でも漏らすことがあるとわかってはいても、目の前で漏らしたら、トイレに行きたいことも言い出せないような人格破綻者か、ケツの緩いゲイだと思われるのではという不安が、My Heart包み込むからだ。
その可能性を回避したということに関しては、当時の自分を褒めてあげたい。

帰りはエレベーターには乗らなかった。もしエレベーターに誰かが乗り合わせると大変なことになるからだ。
ウンコ界のギャングこと『下痢ピー』をパンツの上に乗せて階段を上った。誰ともすれ違うことなく無事玄関に着いた時は、まさに「マンモスうれぴー!」という気分だった。

後になって知ったことだが、友達が教えてくれた腹を押すテクニックは、便秘の人が便を出しやすいようにする為のものということだった。つまり、優しいと思っていた友達の助言は実は、ウンコの進撃を手助けしていた、ウンコ活動を促進させていたのだ。



あいつ次会ったらぶっ殺してやる。


 

うんこ!

うんこ!

 


しょうがない。しょうがない……。