愚かなる独白

愚かなる独白

ろくでなしの雑記

史上最高にショボイが精神的には大事故な話

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 友達からロードバイクを買った。
 その日、友達と釣りに行こうという話になり、せっかくだからそのロードバイクに乗って約束の場所へ向かった。

 僕はスポーツとして乗っている訳でもなんでもないので、ジーンズを履いてダラダラとペダルを漕いでいた。

 信号が青でそのまま直進しようとすると、急に少しペダルが重くなった。何事かと思いブレーキを掛けながら足元を見ると、右足のズボンの裾がチェーンに挟まっていた。

 あっ、と思ったが時すでに遅し。右足を地面に着けようとして重心が右に傾いていたことで、僕の足は地面の感触を知ることはなく、そのまま右側に転倒した。
 遠くから見ていたら、格好つけた若者が自転車に乗った体勢のまま倒れる、という不気味な光景だっただろう。
 
 恐ろしいことに、ちょうどその時車側の信号が赤で、停車中の車から人がこっちを見ていたのだ。
 テメェ見てんじゃねぇこの野郎。
 僕は十代の時に鍛えた鬼ガン(「凄く睨む」の意)で運転手に威嚇する。だが運転手は一切動じることなく、冷房が利いているであろう車内から、突き刺すような視線を飛ばしてきた。いろんな意味で負け気がした。というか負けた。

 恥ずかしがり屋で負けず嫌いな僕は、「全然大丈夫ですよ」「こんなこと日常茶飯事ですから」というやり慣れた演技で顔を作り、立ち上がろうとした。

 う、動けない……。
 右側に倒れて自転車が右足に乗っていて、さらにその上に左足が乗っているような状態だ。しかも一番下の右足はチェーンに挟まっていて自由がない。もう全く立てないのである。
 頑張って反動をつけて体を起こしても、自転車と体が一瞬浮くだけ。
 イライラした僕は、チェーンに挟まったズボンを手で引っ張るが、それも全く取れずに、自転車ごとガチャガチャと揺れるだけで悲惨なあり様だった。

 そうこうしている内に信号は青になり、僕の闘志を踏み潰すかのように、あっけなく車が走り去っていった。
 恥ずかしい……。
 そんなときに僕が考えていたことは、誰も助けに来るなということだった。元々人の手を借りるのが嫌いである自分が、こんな状況を助けられてしまうと終わってしまう。何が終わるのかはわからないが、とにかく終わってしまうような気がした。

 僕は一旦落ち着こうと、その場に寝た。
 今思うとこれはナイスアイデアだった。倒れてガチャガチャやっていると、何をしているんだと気味悪がられるが、寝てしまえば話は変わる。僕の姿を見た人は「あ、ホームレスがあんなところで寝てる」と思うだけだ。

 死体のように静かに寝そべる僕の頭上には、重量感のある鉄の塊が走り去る音が次から次へと響いていた。
 
 そしてペダルを回せばいいんだということに気づきペダルを回してみると、ズボンの裾は取れ、見事脱出に成功した。

 待ち合わせ場所に着いた僕は、まだ釣りも始まっていないというのに、すでに池の主を釣り上げたかのような疲れようだった。

 その日学んだことは「地面で寝ると結構気持ちいよね♪」ということ。