愚かなる独白

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

愚かなる独白

ろくでなしの雑記

始めから最後まで鬱展開の漫画『ブラッドハーレーの馬車』

漫画
ブラッドハーレーの馬車

 

 この『ブラッドハーレーの馬車』とは、沙村広明が描いた一巻完結の漫画です。実はこの漫画、表紙の綺麗な絵とは対照的に、ものすごく陰鬱な話なんです。いや、表紙の絵もどことなく闇が透けている気もするけど……。


 沙村広明といえば、『無限の住人』が有名ですよね。ストーリー的に見ればそこまで大したものでもないと思うが、戦闘描写は格好良いし、画力が高くて絵が躍動しています。絵を見ているだけでも十分楽しめる作品だと思いますね。

  『ナルト』の作者である岸本斉史は『無限の住人』から多大な影響を受けています。特に初期の頃の絵柄なんて完全コピーですからね。後半にいくにつれて独自の絵柄を確立したと思いますけど。

 話は戻って、『ブラッドハーレーの馬車』の肝心の内容です。

 舞台は架空の国の話。国内有数の資産家であるブラッドハーレーというおっさんがいました。おっさんは、自身の経営する劇団に、劇団員として孤児院の少女たちを引き取っていました。その劇団は孤児院で生活する少女たちにとっては憧れであり、みんな劇団員になりたかったのです。しかし、孤児院から集められていた少女たちは、実は劇団員ではなく、刑務所の無期懲役者に対しての性処理の道具として連れてこられていたのです。

 

f:id:utakahiro:20160813134207j:plain
引用元(http://mangayomou.seesaa.net/article/434318558.html


 というお話。
 これが沙村広明の超画力で描かれるわけだからリアルで怖い。そこまでじっくりとではないが、少女が犯される場面も描いています。

f:id:utakahiro:20160813133926j:plain
引用元(http://haruhime.blogspot.jp/


 沙村広明が「赤毛のアンのような作品を描きたい」と言って始まった連載ですが、赤毛のアン的な要素はほとんどありません。舞台となる国家も”議員制政治の西洋”ぐらいの設定しか決まっておらず、具体的にどこかを摘発しようとか皮肉ろうなどと考えたわけではありません。つまり、可愛らしい少女が汚らしい男共に蹂躙される場面を描きたかっただけに思います。

 作者は変態なのか?と思うかもしれません。
 はっきり言います。変態です。

 沙村広明は画集などを出していますが、どの絵も女性が画題で、しかもどの女性も残酷な暴力を受けてボロボロになった様ばかりです(「沙村広明 人でなしの恋」で検索)。この『ブラッドハーレーの馬車』は、そんな変態漫画家が描いた漫画なのですから残酷に決まっています。

 漫画は全八話で構成されていて、一話一話別のエピソードが描かれます。例えば第一話はダイアナという少女が売られるエピソードで、第二話はステラというブロンドの少女が売られた後のエピソード、という具合です。

 刑務所に売られる少女が実際に犯される場面を見るのも辛いですが、だんだん弱っていく様や、期待に胸を膨らませて孤児院を出たところで終わったり、読者を精神的にいたぶるような話が続きます。ストーリーも何もありません。

f:id:utakahiro:20160813141253j:plain
引用元(http://haruhime.blogspot.jp/


 読んでるとだんだん吐きそうになってくるか、逆にツッコミどころをみつけて気を紛らわすか、ということになると思います。もしくは興奮するか……。

 僕は沙村広明の絵が好きなのでこの漫画を買いました。安定しない繊細な線や、動きのある人物、映像のような臨場感のある構図、といった感じで、情緒的な絵が魅力です。そして、どんな角度からも描ける人なので、このような残酷で救いのない話でも絵を見ているだけで読めてしまいます。

 さらに優れている点といえば、説明的でないところ。漫画というのは視覚的に訴える表現物ですから、台詞で説明したりナレーションで説明したりしないのが基本です。沙村広明はそれが出来ていて、一コマ入れるだけで状況を表したり、キャラクターの表情一つで心情を表現しようとします。つまり読者にも読み解く努力を要求するのです。僕はそれこそが本来の漫画だと思っているので、説明的でない演出をされるとつい嬉しくなります。

 とにかく、読んでみたいと思う人は是非買って読んでみてください。作者の画力の高さや演出力の高さに驚くと共に、内容の残虐性に吐き気を催すことでしょう。

 

なぜかKindle版しかないんだが……。

ブラッドハーレーの馬車

ブラッドハーレーの馬車

 
波よ聞いてくれ(2) (アフタヌーンKC)

波よ聞いてくれ(2) (アフタヌーンKC)

 
ハルシオン・ランチ 1 (アフタヌーンKC)

ハルシオン・ランチ 1 (アフタヌーンKC)

 

 しかし沙村広明はコメディも描けるから驚きですわ